第9回・後編 「選手が求めているものに対してフォローしていけば、選手は理想の姿に近づいていく」

様々な業界で活躍するトップリーダーの方をゲストにお招きし、どのようにトップにまで上り詰めたのかを、リアルな体験をもとに成功の技術を熱く語りつくすラジオ番組、青木仁志のトップリーダーと語る「成功の技術」。第9回放送には、東京ヤクルトスワローズ 二軍投手チーフコーチの尾花髙夫さんが登場。尾花さんは、東京ヤクルトスワローズの2軍投手チーフコーチとして、チームが最下位だったところから、2年連続のリーグ優勝に貢献されました。青木も「指導者のなかの指導者で、物事の本質から組み立てて人を人格形成まで導ける方」と語ります。放送の後半では、選手の主体性を引き出す質問力、選択理論心理学に基づく関わり方について伺いました。

質問の仕方一つで与える結果が、全然違ってくる

後呂アナ

選手たちの内側から目標が芽生えるよう、工夫や努力されたことはありますか。

尾花氏

それは質問力にかかってきます。質問は大きく分けると4つに分かれると思っています。一つ目は、拡大質問と特定質問。二つ目は、未来質問と過去質問。三つ目は、肯定的質問と否定的質問。四つ目は、自己評価を促す質問です。

後呂アナ

それぞれ、ご説明いただいてもよろしいでしょうか。

尾花氏

一つ目の特定質問はイエスかノーで答えられる質問です。例えば、「朝ごはん食べた?」というもので、食べた・食べていないで答えられます。それが、「朝ごはん何食べた?」となると、何を食べたかを答えます。続いて、「じゃあ、それは栄養的にどうなの?」と話が広がっていきます。これが拡大質問です。拡大質問は話が広がっていくことにより、相手が考えていることを引き出すことができるのです。

後呂アナ

なるほど。話を広げて相手を知っていく訳ですね。

尾花氏

そうです。二つ目の過去質問は、「なんでお前は失敗したんだ」というような質問です。このような質問をされると、相手は失敗したことを考えます。これを未来質問にすると、「じゃあどうしたら成功すると思う」という風になります。このように聞かれると、相手は成功するために必要なことを考えるようになるのです。

青木

だんだんヤクルトが優勝した本質が出てきましたね。

 

後呂アナ

質問の仕方一つで与える結果というのが、全然違ってくるのですね。でも、指導する側からすると、できないことに対して怒りたくなったりしないのでしょうか。

尾花氏

カチンとくることはあります。私も昔は威圧的な態度で関わっていました。でも、選択理論心理学を学んでから変わりました。従来の心理学では、外部から刺激を与えて相手を変えようとしました。しかし、それでは人間関係が良くなりませんし、相手のモチベーションも上がりません。

青木

人間の頭のなかに、アクセルとブレーキがあると考えると分かりやすいです。本来人間というのは、内側に自分を動かすエネルギーがあり、好きなことの方向に向かっていきます。だから肯定的なものの方に向かい、苦痛から逃れようとするんです。従来の指導者は、苦痛を与えて、快感の方にギアを入れさせようとしますが、それでは選手との関係性が悪くなってしまいます。

引き出すことを覚えると、選手の無限の可能性を引き出せる

尾花氏

私も以前まで、上から威圧的に教えていました。しかし、それでは自分のキャパのなかでしか教えられないと気づきました。引き出すことを覚えると、選手の無限の可能性を引き出していけます。あとは、選手が求めているものに対して我々がフォローしていけば、その選手は理想の姿に近づいていくのです。

後呂アナ

そうなると、色んな選手が育ちそうですね。

尾花氏

そうなんです。相手の持っている能力を最大限に発揮させることができます。これが押し付けだと、自分のキャパ以外のことはできなくなります。

青木

尾花さんの仰る通りだと思います。正解を押し付けられるような指導をされると、考えない人間になってしまいます。でも、尾花さんのような質問力を持ち、選手と関わると自ら考えますよね。自ら考えると、自ら行動するようになり、成果を出すことに繋がる訳です。

尾花氏

外部から刺激を与える指導は、ある意味簡単です。上から圧力をかければ、選手は行動してくれる訳ですから。選択理論心理学に基づく関わり方は、確かに時間も手間もかかりますが、本人を内側から動機づけられることで、私がいなくなっても継続して成長することができます。

青木

そこは重要なポイントだと思います。本当の育成というのは、指導者が抜けても本人の実力が付いているので再現性がある訳です。

尾花氏

それと、チームであっても企業であっても、大切なのは、選手や人を育て続けることだと思っています。例えば、野球の場合、チームが強くてレギュラーが固定されているときは育成を怠りがちです。でもいまは、ポスティングシステムやFA制度などで、チームのレギュラーが急にいなくなることがあります。そのとき、代わりとなる選手を育てていないとチームは一気に落ちていきます。なので、選手や人を育て続けることが、強くい続けることや繁栄し続けることに繋がっていると思いますし、私も5年先をシミュレーションしながら関わっていくことを大事にしています。

青木

お話を聞いて、尾花さんの人柄、在り方が指導力の根幹にあると感じました。

 

前編・「ヤクルトの守護神・田口投手も講座で学んだことを教えて成長していった一例」はこちら▶

尾花 髙夫(おばな たかお)
東京ヤクルトスワローズ 二軍投手チーフコーチ
1977年度ドラフト4位でヤクルトスワローズに入団。1991年まで在籍し同年現役を引退。1995年以降、4球団でリーグ優勝7回、日本一に4回導く。2021年よりヤクルトスワローズ2軍投手チーフコーチに就任。チームが前年まで最下位だったところから、2021年、2022年と2年連続のリーグ優勝を達成している。

中小企業経営者のための
高収益企業を実現する
2つのポイント

売上56億円、経常利益18億円、従業員200名の企業体を実現した経営手法を2つのポイントから解説します。

TOP