第10回・後編 「野球選手の方程式は、素質×考え方×行動=仕事の質」

様々な業界で活躍するトップリーダーの方をゲストにお招きし、どのようにトップにまで上り詰めたのかを、リアルな体験をもとに成功の技術を熱く語りつくすラジオ番組、青木仁志のトップリーダーと語る「成功の技術」。第10回放送には、東京ヤクルトスワローズ 二軍投手チーフコーチの尾花髙夫さんが登場。前回の放送では、尾花さんが実践している選手との関わり方や選手の主体性を引き出す質問力に迫りました。第10回放送の後半では、外的コントロールを使いそうなときの対処法、尾花さんが考える野球選手の方程式について伺いました。

外的コントロールは相手との関係を崩すことに繋がる

後呂アナ

二つ目の質問に移らせていただきます。「社員や周りの人に対して、ついつい外的コントロールを使ってしまうことはないのですか」というご質問です。「外的コントロール」という言葉も出てきましたが。

尾花氏

外的コントロールというのは、強制したり、命令したり、脅したり、批判したりといった方法で相手を刺激して、相手をコントロールしようとする行為です。

後呂アナ

この外的コントロールを使ってしまうことはないかという質問ですが、いかがでしょうか。

尾花氏

やはり学んですぐは、従来の心理学の刺激-反応理論が出てきます。ただ、少しずつ意識をすることによって、少なくなっていきます。私は最初のころは外的コントロールが出そうになったら、「なるほど」という言葉を間に入れ、自分を冷静にさせていました。いまはほぼ出ないですが、3年くらいかかりました。

後呂アナ

それだけ長くかかったのですね。

尾花氏

それまで刺激-反応理論を使っていた人は直すのに苦労すると思います。

後呂アナ

いま仰った刺激-反応理論といった外的コントロールを使った指導は、スポーツ界でどのくらい使われているのでしょうか。

尾花氏

いまだに90%くらいは外的コントロールを使った指導だと思います。これは指導者が刺激-反応理論以外の方法を知らないからです。選択理論心理学を知れば、こちらを使おうとなると思います。なぜなら、相手との関係を崩さないで済むからです。外的コントロールは相手との関係を崩すことに繋がります。

相手が考え方と行動を自ら変えたいと思うような情報を伝える

青木

私はこの選択理論心理学を世の中に広める仕事を36年してきました。そのなかで感じたことは、新しい道具に慣れるのには時間がかかるということです。この道具を使えば便利だと分かっていても、それを使えるまでに時間がかかるのと同じです。大切なのは、自分なりにどこを目指すか明確にすることです。それによって、コントロール能力も高まっていくと思います。私の子どもは二人とも独立して起業家になっていますが、子どもの頃に一回も「勉強しろ」という言葉を使わずに育てました。

後呂アナ

驚きです。勉強は実際にはしたのでしょうか。

青木

しませんでした。

後呂アナ

それでも大丈夫だったのですか。

青木

大丈夫です。何が一番大事かというと、教育の目的は、健全な自己概念の形成と、肯定的なものの考え方を身に付けることにあるということです。なので、私は子どもにどうやったら勉強を楽しくできるか一緒に考えていこう、という関わり方をしていきました。

後呂アナ

それを指導者としても同じような関わり方をしているのですね。

青木

そうです。私の会社には200名くらいの社員がいますが、社員に対しても「働け」と言ったことはありません。勉強とロジックは同じです。どうしたら仕事が楽しくできるかなんです。どうしたら言われなくても自主自立するか、その工夫をするのが指導者です。

後呂アナ

なるほど。スポーツの話に戻りますが、選手の才能を伸ばせる指導者と、そうでない指導者の違いはどういったところにあるのでしょうか。

尾花氏

野球選手の場合ですが、素質は確かに大事だと思いますが、素質以上に大事なのは、考え方と行動です。私は野球選手を方程式にしていまして、「素質×考え方×行動=仕事の質」というものです。つまり、素質が一流でも考え方と行動が二流では、仕事の質は二流で終わってしまうということです。逆に素質が二流でも、考え方と行動が一流であれば、超一流にはなれないけども一流にはなれると思っています。大事なのは、相手が考え方と行動を自ら変えたいと思うような情報を伝えたり、自ら変わりたいと思えるような関わり方をすることです。考え方が変われば行動が変わり、行動が変われば結果が変わるのです。

青木

私の場合は、「資質×環境×本人の選択=その人の人生」という方程式を持っています。尾花さんと少し違いますが、本質は同じです。そして、内発的動機づけが鍵だということです。人は内側から動機づけられて、願望を実現させるために生きている存在なので、その方向に導いていくことが大切です。尾花さんのお話を聞いて、よい指導者は、相手が主役と相手中心のアプローチをし、内側からやる気や成功への決断を引き出すことが大切だと再確認できました。

 

前編・「相手が主役と考えることが、相手の能力や内発的動機づけを引き出すことに繋がる」はこちら▶

尾花 髙夫(おばな たかお)
東京ヤクルトスワローズ 二軍投手チーフコーチ
1977年度ドラフト4位でヤクルトスワローズに入団。1991年まで在籍し同年現役を引退。1995年以降、4球団でリーグ優勝7回、日本一に4回導く。2021年よりヤクルトスワローズ2軍投手チーフコーチに就任。チームが前年まで最下位だったところから、2021年、2022年と2年連続のリーグ優勝を達成している。

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