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一般社団法人日本経済団体連合会 米国事務所長
魚住康博氏
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アチーブメント株式会社 顧問 木俣佳丈氏
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アチーブメント株式会社 代表取締役会長 兼 社長
青木 仁志
国を率いる“リーダー”輩出に向けて
一般社団法人 日本経済団体連合会、通称『経団連』
「財界総本山」とも称され、日本商工会議所、経済同友会と並ぶ「経済三団体」の一つとして、日本経済に与えてきた影響は限りなく大きい。その経団連に、2019年4月にアチーブメント株式会社が加入。そこで今回は、経団連米国事務所長の魚住康博氏と共に、国際社会で大きなリーダーシップを発揮するアメリカの強みにフォーカスしながら、日本の将来を担うリーダーの要素について意見を交わした。(ワシントンD.C.開催 )
世界をリードするアメリカの強さ
本日は、一般社団法人 日本経済団体連合会、通称『経団連』の、米国事務所長である魚住康博氏にお話を伺います。
アチーブメント社は2019年4月に経団連に加入させていただく予定ですが(2019年4月加入)、加えて、この度、魚住さんのご尽力で米国事務所で「人を生かし、人を育てる 志経営の極意」というテーマで
経団連米国事務所が位置するアメリカのワシントンD.C.といえば、アメリカの政治の中心。アメリカは世界のリーダーであり、ワシントンはその意思決定がされる中心ということもあり、荘厳な印象を受けます。
ニューヨークと違って、静かで落ち着いています。しかし、シンクタンクの数や、大使館の数などを見ても、ここには世界中から専門の方々、トップクラスの方々が集まっていますから、教育水準もたいへん高いです。国際的な方向づけを担っている米国の政治の中枢があることから、ここから世界の方向性が決まっています。
例えば、ロンドンはビジネス、政治の面でもハイレベルな街ではありますが、世界の方向付けを行っているかというと、このワシントンD.C.とは一線を画すると思います。
このような街は世界でも類がないでしょう。経団連米国事務所は、日米関係機関との連携、米国における情報発信・政策広報が主たる役割ですが、日本としてどういう活動をしていくか、日本の経済界として我々も考えていかなければなりませんし、日本企業がよりビジネスがしやすくなるようにという点でも、本事務所の存在意義があると考えています。
今回、アメリカの独立宣言に、絞首刑を覚悟してサインをした原版を見て、信念を持って人々を導いたリーダーたちに思いを馳せました。私も教育を通して、人づくり=国づくりをしていると考えていますので、自分の仕事の意味と価値も見つめなおす機会になりました。
アメリカは、多様な価値観を受け入れるのが強さだと感じます。アメリカの強いリーダーシップ、影響力はどこから出てくるのでしょうか。
おっしゃるようにアメリカの強さは自由、機会均等に成功のチャンスがあることだと思います。女性の活躍推進を掲げている方もいますが、これだけ多様な人種が世界中から集まり、その成功を受け入れる土壌がある国はあまりありません。
だからこそ能力のある方が訪れる国でしょうし、「ここで挑戦しよう」とする意志にもなるのではないでしょうか。
自分が「何かをやりたい」と思い立ち、どこでやりたいか、どこに行きたいかというときにすぐに対象になるのがアメリカとなるのが、この国の強さではないかと思います。
〝リーダー不在〟が叫ばれる日本
行きたくなる国、行って成功を収めるチャンスがあると確信できる国。この辺がアメリカの求心力であり、強さになっているということですね。
アメリカの最大の産業は教育産業ですが、全世界の留学生の1/3、つまり世界トップの1/3は、「まずアメリカだ」と、この国で知識を集め、新しい思想や考え方を発明して、その考え方を輸出していきます。その循環でますますこの国の強さが大きくなっていくと。
今年、世界約140カ国以上の国々から約3000名を超える要人が招かれる米国家朝餐祈祷会に参加させていただきました。
毎回、現職の大統領が演説するのが伝統となっており、今回は、トランプ大統領が演説されましたが、あの方は優秀な経営者だと思います。人としての在り方や倫理的な部分は私にはわかりませんが、いろんな人の意見を聞いてしまい、結局何も意思決定出来ない指導者ではなく、自分なりに哲学や考え方をもって信念を貫く姿を見ると、手腕があるのだろうと感じますね。
世界のリーダーに言えることですが、人々の批判やマイナスのエネルギーに打ち勝って、微動だにせず大国を引っ張るというのは、強い信念がないとできないことです。
そうですね、賛否両論の中で、影響力を持てるというのは、普通の人にはできないことだと思います。こうした変化を起こせるのがアメリカの強みの一つかもしれません。
国も人も、「影響を与える国」と「受ける国」に分かれると思いますが、アメリカはイノベーションを起こし、変化を起こし、世界に影響を与える側だと思います。
日本はまだまだ影響を受ける側という見方もあるかもしれません。いずれにしろ「リーダーが少ない」という声は根強くあります。リーダーは社会から自然と出てくるものだと私は思いますが、今後日本が国際社会をけん引していく上で、その担い手となるリーダー育成についてはいかがお考えでしょうか。
世界の中でトップリーダーとして活躍される方々は特に若いころに、意図的に必要な知識やスキルを身につける環境に身を置かれています。システム的な側面は重要ですが、今の日本の中だけでは自然発生的に出てこないだろうと思います。
今、多くの経営者がどこでビジネスをしているかという意味では、国際的なマーケットで稼がざるを得なくなっていることは間違いありません。これまではある程度、日本の中だけでビジネスも成り立っていたと思いますが、今の状況を考えると世界と繋がるビジネスが当然になっています。そうなれば、分業や専門の方も必要で、マネジメント能力やリクルーティング能力も必要になってきますが、生まれた時から経営能力があるわけではないでしょう。それゆえ、こうした経営者としての能力を意識して学んでいくことがどの企業でも必要だろうと思っています。
一時期、海外に人財を出す日本企業が少なくなったと思いますが、粛々と続けている企業の中には、国際的に活躍されている方が育っている例も数多くあります。ワシントンで留学やインターンをしている人は、世界で活躍できるリーダーへと成長しようという思いを持っている方が数多くいらっしゃいますので、そういう人たちを中心として10年後、20年後、日本人としての価値観をもった上で世界で活躍していかれると思います。やはりそうした環境に身を置き、体験をすることが将来の成長の角度を変えると思いますので、ぜひシステムとして用意しておきたい部分です。
経営者は、「判断力」・「実行力」・「リーダーシップ」を高めなければなりませんが、その源になるものが、志・目的です。
元文部科学大臣で日本青年会議所の旧友である下村博文氏との共著『志の力』にも書きましたが、今後は「夢と志の違い」がますます問われていくと思いますね。意外な方も多いかもしれませんが、実は若い方は夢を持っている方は比較的多いと思います。ただ、「周りのことは考えず、自分は自分の夢を追う」といったような、自己中心的な夢の持ち方が増えていると思います。
大切なのは、愛や利他の要素が含まれた「志」です。自己中心的なものの考え方ではなくて、どうしたら縁ある人たちが物心両面の豊かな人生をおくれるのか、どうしたら良い社会をつくっていけるのかという大局に立った「ものの見方・考え方」ができる人が指導者です。
指導者とは〝志導者〟
志を土台に、「良い国、良い社会をつくろう」という公の志を持つことがますます求められます。そうした志を持ったリーダーをいかに輩出していくかにこれからも注力したいですし、日本の国民の特性を見ても、そうした志導者が輩出する可能性は他国より大きいと思います。
世界で活躍できるリーダーの輩出が急務であり、そのための教育をどう整えていくかが今後の日本の課題です。リーダー輩出に向けて、今後も経団連とアチーブメント社、共に力を合わせてまいりましょう。本日はありがとうございました。