理事長/メンタルセラピスト
井上裕之氏
トップリーダーが実践している未来を拓く“考え方”のチカラ
厚生労働省の指導により、2015年12月から社員50人以上の会社で『年1回のストレスチェック』が義務づけられることになるなど、近年、職場や家庭においてメンタルの疲労を抱えた人が急増している。今後セルフマネジメントの重要性はますます深まっていくだろう。そこで今回は、歯科医師としての本業の傍ら、世界初の、ジョゼフ・マーフィー・グランドマスターの称号も獲得されるなど、幅広い分野での実績をおさめられている井上裕之先生をお招きし、「トップリーダーが実践している未来を拓く考え方」について話を聞いた。
トップリーダーが実践している未来を拓く“考え方”のチカラ
本日は、歯科医師・メンタルセラピスト・歯学博士・経営学博士の井上裕之先生をお迎えしております。多面的な分野で高い実績を残し、著者としても40冊以上執筆し、累計は110万部を超えるなど、社会教育家としてもご活躍されていらっしゃる井上先生に、今回はトップリーダーが実践している思考習慣や行動習慣に関してお話をお伺いできればと思います。さっそくではありますが、先生の中で信条とされている言葉などからお聞かせください。
座右の銘で言えば、「本気で生きる」です。ただ、若いころは、常に「一番になりたい」という言葉を持っていました。自分の中に二番という選択肢はなかったですね。
非常に共感しますね。私も若い頃そうでした。
例えば大学院時代には、週に1回のアルバイトという身でしたが、常勤の先生より売上を上げるためにはどうしたらいいのかと常に考えていました。また大学院も四年という最短年月で修了するために、三年で論文を書きあげる計画を立て、実際に修了しました。そのために、医局の歓送迎会も参加はしますが、二次会には行かず向かう先は研究室。しーんとした教室で、翌日の研究テーマに関する資料作りを行っていたことを覚えています。結果を出すためには、やはり時間の量を絶対的に確保することですね。とにかく頭と体を使い切っていました。
まさに仕事の量で勝つですね。「一番になりたい」という思いが現象を創り出した。
はい、徹底的に取り組む時期が人生にはあり、そうしたステージを一つずつ上がった結果で、経済的にも充実した今の日々があると思います。
私も人生を、「学習の段階、指導力開発の段階、挑戦の段階、富の形成の段階、社会還元の段階」と5段階に分けていますが、特に学習・指導力・挑戦の段階は長かったと思います。
やはり若い時は特に「とことんやる」ことです。一見スマートにやってきたと思われますけど、とんでもない。人一倍、泥臭くやってきました。何か目標を設定すると、達成するまで徹底的にやり続けてきました。結果が出るなら死んでもいいという気持ちでしたね。また、成長というものも自分の中でキーワードになっています。常に成長したいという思いで、日々の一生懸命を積み重ねていくことが、物心ともに豊かな自分を創り出していきました。成長とは、理想を求めていくエネルギーだと思います。そして成長するために必要な一つの要素は「悔しさ」にあると思います。
その言葉でブリタニカ時代にあった「なにくその肥料で、やる気の木は育つ」という言葉を思い出しました。当時の私は劣等感や悔しさの負のエネルギーがモチベーションの源泉でした。
重要なのはその負のエネルギーで終わるのではなく、そういう悔しさや不甲斐なさを噛みしめたところから、次第に貢献の気持ちへと繋がっていくことでしょう。私も、初めは「今に見ていろ」という気持ちでしたが、能力がついてくると、社会貢献の気持ちが強くなると共に、人のミッションに対して貢献できる自分になりたいと思いました。
確かに私自身もそういう部分はあるかもしれません。まったく勧められませんが、よくブリタニカ時代に夜遅くまでセールストレーニングをしていて、翌日の会議の時に睡魔が襲ってきたときは、太ももや手の甲にペンを刺したものです。
それぐらいの気持ちでなければ世の中に立つような人になれないということですね。自分が頑張ってきた、頑張っているときの苦しさをわかっているからこそ、成長し、人に優しくなれると思います。そして、他の人がやらない領域まで自分に厳しく、律して行動した経験があるからこそ、思い描いたイメージが実現していくことが実感できるのでしょう。
先生のお話からは、「見えないものが目に見える現象を創り出している」という確信を感じます。ここがお互い非常に共感するポイントの一つですね。
おっしゃる通りです。そして、今までたくさんの成功者と呼ばれる方と接してきましたが、みなさん共通して「人生に辛いことがなかった」とおっしゃいます。もちろん、辛いことがなかったわけではなく、それらは「自分の成長の糧だった」と考えるのです。
「生きがいとは人が熱情を注ぐ仕事の中に苦労とともに見出す深い喜びである」という言葉でしょう。成功者に共通する思考習慣だと思います。
原理・原則を貫く者が私的・公的成功を収める
先生は、人財育成を行う経営者・セルフマネジメントの手助けをするメンタルセラピスト、私も能力開発のプロトレーナー・企業の経営者として、お互い人財の育成に関してプロと言ってもいいと思います。先生の最新刊である『99%の医者が知らない言葉のおくすり』は、主に、言葉の力によって心の問題を解決していくことが述べられた書籍ですが、育成の面も含め、周囲への言葉のかけ方・接し方で先生が普段から気をつけていることは何でしょうか?
まずは受けとめ、認めることです。決して否定せず、たとえ自分と考え方が違っても、「たしかに、そのような考え方がありますね」と言います。自分にとって価値観にないものであるほど、有難いと受け取ることです。寄り添いながら、少しずつその人が、結果を積み重ねていけるような協力・支援・サポートをしています。その人の本当に成したい価値はなんなのか、価値を実現してあげるためには何ができるのか。その人にあった形で、励ましや叱咤激励を使い分けています。
しかし、そのためには「感じる力」が、さらにその「感じる力」を持つためには、普段から「規律」が必要です。規律があるからこそ、変化を読み取ることができるのだと思います。でも、現場の医師には、「悔しさ」を感じてもらうため厳しく言いますが(笑)。
確かに厳しさだけでは人は育ちませんね。「求めよ、さらば与えられん」という言葉にあるように、まずは、願望の明確化に焦点を当てて関わるということでしょう。何をしているのかという事実をしっかりと本人に自覚させ、求めるものと現実のギャップを認識させる。そして、解決策を一緒に考えることで、求めるものを得られるようにサポートしていく。
おっしゃる通りです。私は、子育てに関しても、子どもには厳しく必要なことをはっきり言うことを意識しています。子どもも一人の人間だと思っていますから。勉強しろは言いませんが、礼儀・礼節に関してはすごく厳しいと思います。
私も、本質的なことに関しては子どもに厳しく伝えます。例えば、嘘を言う、約束を守らないなど、放置したら本人のためにならないことですね。「お父さんは勉強はしてもしなくてもどちらでもいいと言うけど、約束は守れと言うだろう?これは譲ることはできないと思っているが、どう思う?」と問いかけます。教育基本法にあるように、教育は人格の完成を目指しています。勉強はもちろん大切ですが、それは人格を完成させるツールでしかありません。相手に対して、自分から自主的に取り組めるようにサポートすることの一つとして、時にはフィードバックも必要ですね。
本質的と言えば、世界中の成功者に貫くものを知るために、私も昔から彼らの音声を徹底して聞き、潜在意識に刷り込みました。そしてその後には映像を通して、その人の身ぶり手ぶり立ち振る舞いを学ぶなど、徹底的な落とし込みをしました。原理・原則や本質と呼ばれるものを貫いた人のみが、私的成功・公的成功を収めるという確信があります。私自身も、それらをさらに追求していきたいですね。
人間教育に対する情熱、達成に対する考え、原理原則への確信など、考え方に大変共通するものを感じました。私も「果実を生み出す基になる考え方」を伝え続けるため、これからもさらに精進したいと思います。先生の今後のご活躍を祈念いたします。本日はありがとうございました。