第10回・前編 「相手が主役と考えることが、相手の能力や内発的動機づけを引き出すことに繋がる」

様々な業界で活躍するトップリーダーの方をゲストにお招きし、どのようにトップにまで上り詰めたのかを、リアルな体験をもとに成功の技術を熱く語りつくすラジオ番組、青木仁志のトップリーダーと語る「成功の技術」。第10回放送には、東京ヤクルトスワローズ 二軍投手チーフコーチの尾花髙夫さんが登場。前回の放送では、尾花さんが実践している選手との関わり方や選手の主体性を引き出す質問力に迫りました。第10回放送の前半では、相手のやる気を引き出すために大切な考え方、選択理論心理学の5つの基本的欲求について伺いました。

相手のやる気を引き出すためには、相手が主役だと考える

後呂アナ

今回はリスナーの方から番組にお寄せいただいたメッセージをご紹介したいと思います。まず一通目です。「頑張ってメンバーを一人前に育てようと面談をしたり、直接指導したりしているのですが、メンバーからはやる気が感じられません。むしろ私の方が熱量があるように感じます。どうしたらメンバーはやる気になってくれるのでしょうか」というご質問です。

尾花氏

これは、自分が相手にこうなって欲しいという考えがあり、それを相手に押し付けている感じがします。相手が会社のなかでどうなりたいのか、どういう風に力を発揮したいと考えているのかを聞いて、そこから関わる必要があると思います。指導者の方に熱量があるのはとてもいいことなので、相手がどうなりたいのかを知っているかが一番大事だと思います。

後呂アナ

相手の本当の望みを知ることで、熱量が生まれてくるということですね。

尾花氏

同じ熱量を相手に注ぐのであれば、相手がどうなりたいのかを知って、そこに対して熱量を注がれた方がいいと思います。

後呂アナ

一方的な熱量の与え方ではないんですね。

青木

「好きこそものの上手なれ」という言葉がありますが、それを裏返すと「嫌いは下手の証拠」となります。人は好きなことに対して熱量がでます。前回の放送では、質問力の大切さを強調していましたが、相手の立場に立ち、願望を明確にし、願望実現のために仕事も活用していく、という姿勢で相手中心のアプローチをすることです。そうしないと、押し付けられているという感覚を与えてしまったり、引いてしまったりして、成果は期待できません。

尾花氏

私が相手のやる気を引き出すために気を付けているのは、相手が主役だと考えることです。自分を主役にして教えると、「なんでこんな簡単なこともできないんだ」「なんで分からないんだ」となります。それが、相手を主役にすると、相手は何に困っているのか、どういう方法があるのかと、相手の立場になってものを考えるようになります。そうすると質問も生まれてきますし、それが結果的に相手の能力、やる気、内発的動機づけを引き出すことに繋がります。

青木

私からは3つのポイントを挙げたいと思います。一つ目は、相手が仕事を好きになるためにどんな工夫ができるのか。二つ目は、メンバーが楽しく仕事ができるようにするためにはどんなことができるのか。三つ目は、あくまで支援的な姿勢を大切にする。これが私からのアドバイスです。

人は外からの刺激で動くのではなく、本人の内側から動機づけられている

後呂アナ

どれも相手が主役になっていますね。尾花さんもすごく頷いていらっしゃいましたが。

尾花氏

モチベーションが上がらないというのは、自分が思っていることと違うことを要求されるから下がってしまう訳で、相手が何を求めているのか知ることが大事です。それと、5つの基本的欲求のなかでどの欲求が強いのかを知り、その欲求と結び付けて関わることも大事です。

後呂アナ

5つの基本的欲求というのはどういうものですか。

 

尾花氏

人には誰しも、「生存の欲求」「愛・所属の欲求」「力の欲求」「自由の欲求」「楽しみの欲求」という5つの基本的欲求を持っているとグラッサー博士は仰っています。人それぞれ欲求は違いますが、必ず持っているので、それをまず知ることが大事です。

後呂アナ

どこが満たされていないのかを知るということでしょうか。

尾花氏

満たされていないところを知るというよりは、どの欲求を持っているのかを知るということです。話のなかで、この選手は楽しみの欲求が強いと分かれば、楽しみの欲求を刺激しながら指導していきます。

後呂アナ

なるほど。どこを伸ばせばやる気になるのかという、エネルギーのもとがどこにあるのかを知る訳ですね。

尾花氏

仰る通りです。

青木

グラッサー博士というのは、選択理論心理学を提唱したアメリカの精神科医です。その方が、人は外からの刺激で動くのではなく、本人の内側から動機づけられていると、脳の仕組みを解明しました。この動機づけられる欲求が、尾花さんが仰った5つの欲求です。人それぞれ、どんな方法で欲求を満たすのか個人差がありますが、これらの欲求の1つ以上を満たそうと行動する訳ですね。

 

後編・「野球選手の方程式は、素質×考え方×行動=仕事の質」はこちら▶

尾花 髙夫(おばな たかお)
東京ヤクルトスワローズ 二軍投手チーフコーチ
1977年度ドラフト4位でヤクルトスワローズに入団。1991年まで在籍し同年現役を引退。1995年以降、4球団でリーグ優勝7回、日本一に4回導く。2021年よりヤクルトスワローズ2軍投手チーフコーチに就任。チームが前年まで最下位だったところから、2021年、2022年と2年連続のリーグ優勝を達成している。

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